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下血の原因
下血とは、消化管内で出血した血液が肛門から排出されることをいいます。便やそれに混じる血液の色によって黒色便と赤い鮮血便に分類されます。黒色便は上部消化管(食道・胃・十二指腸や小腸など)からの出血によって生じます。上部消化管からの出血では、胃液や腸内細菌が関係して便が黒色になるといわれています。一方、鮮血便は比較的肛門近くからの出血によって生じます。つまり、便の色によっておおよその出血部位とその原因となる病気が予測できるということです。
それでは、黒色便の場合、どのような病気が考えられるのでしょうか。食道から出血する病気(食道静脈瘤(りゅう)、食道がんなど)、胃から出血する病気(胃潰瘍、胃がん、重症の胃炎など)、十二指腸から出血する病気(十二指腸潰瘍、十二指腸がんなど)が挙げられます。また、貧血のために鉄剤を飲んでいる場合も黒色便を生じます。
では、鮮血便はどうでしょうか。直腸がんを含む大腸がんや最近急増傾向にある炎症性腸疾患(クローン病や潰瘍性大腸炎)、腸炎、憩室炎などが挙げられます。また、国民病ともいわれている痔(じ)も鮮血便を生じます。
このように下血といってもさまざまな原因が考えられます。もし下血した場合は、「どうせ痔だから心配はいらないだろう」と自己判断はせずに、消化管に重大な病気が隠れていないかを内視鏡検査で確認することが重要です。下血、それは果てしなく長い消化管の異常と対話できる大切なメッセージなのです。
2019年3月1日発行 第1904号