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ワンポイントアドバイス
抗菌薬(抗生物質)の適正使用について
皆さんは「抗菌薬(抗生物質)」のことを、“熱が出たときに飲む薬”と勘違いしてはいないでしょうか?中には「喉が痛くて熱が出た」と病院に行き、「溶連菌感染症」の診断の下に抗菌薬が処方された経験をお持ちの方がいらっしゃるかもしれませんが、それでも熱が出たというだけで「抗菌薬を飲まなきゃ」と考えてしまうのは、大抵は間違っています。
抗菌薬の役割を正しく理解するには、まず感染症の主な病原体である「細菌(ばい菌)」と「ウイルス」の違いを理解しなければなりません。細菌はウイルスよりも数十~百倍ほども大きく、サイズが全く異なります。また、細菌は自分の力で増殖することができますが、ウイルスは人や動物の細胞の中でしか増えることができません。両者は性質の異なる全く違う病原体なのです。そして抗菌薬は“細菌にしか効かない薬”なのです。
例えば、冒頭に示した溶連菌感染症は細菌感染症ですので抗菌薬がよく効きます。しかし熱が出る感染症(いわゆる風邪)はほとんどがウイルスによる感染症のため、その場合、抗菌薬を服用しても効果はないのです。それどころか、むやみに抗菌薬が使われると腸内環境が悪化して下痢になったり、菌が抗菌薬への耐性を持ってしまって本当に必要な時にその抗菌薬が効かなくなったりする恐れもあります。
ですから、発熱時に病院を受診して抗菌薬が処方されなかったとしても心配はしないでください。ただし4日以上発熱が続く場合は再受診して医師の指示に従うのがよいでしょう。
2019年8月1日発行 第1920号