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認知症と物忘れの違い
人の名前が出てこなかったり、昨日何を食べたか忘れたりすると、自分は認知症になったのではないかと心配する人がいます。でも、後で思い出したり、人から聞いたりして「ああそうだった」と納得するようなら心配ありません。それは単なる物忘れで、加齢に伴う生理的な現象です。認知症になると過去のある記憶全体がすっぽり抜け落ちてしまいます。例えば、旅行に行っておいしいものを食べて帰った時に、メニューの一部を忘れてしまうのが生理的物忘れで、旅行に行ったこと自体を忘れてしまうのが認知症なのです。認知症の人は後から旅行へ行ったことを説明されても全く思い出せないため、自分の記憶力が悪いという認識がなく、しばしば記憶力は悪くないと主張します。
最近では、正常と認知症との境界域を軽度認知機能障害(MCI)と定義するようになっています。認知症の人は大事な約束をすっぽす、通帳やカードを何度もなくすなど日常生活に支障が出るのに対し、多少の記憶障害があっても、日常生活にはまだ支障が出ない状態をMCIと呼びます。しかしながら、人間の認知機能は複雑で多岐にわたっており、実際にはどこまでが正常で、どこからが認知症なのか判断が難しいことも少なくありません。少しでも自分でおかしいなと思ったら、かかりつけ医や物忘れ相談医、認知症専門医に相談してください。
2019年9月1日発行 第1923号